【鍼灸師が解説】東洋医学からみる8つの体質
こんにちは、院長の久保和也です。
今回は「東洋医学からみる8つの体質」をお伝えできればと思います。
自身の体質を知ることで「日々の養生ポイント」や「どんな対策をとれば良いのか」を理解できますので、ぜひ参考にされてみてください。
記事は5分ほどで読み終わります。
【鍼灸師が解説】東洋医学からみる8つの体質
下記の8つです。
- 気虚:エネルギー切れ
- 血虚:血の不足
- 気滞:気の滞り
- 瘀血:血の巡りが悪い
- 陰虚:水の不足
- 痰湿:水が停滞
- 陽盛:熱が過剰
- 陽虚:温める力がない
それぞれの特徴や体質別に気をつけることを解説していきます。
①気虚(ききょ)
気虚とは身体のエネルギー(元気)が足りていない状態のこと。
特徴は下記のとおり。
- 疲れやすい
- やる気が出ない
- 息切れをしやすい
- 食欲がない
- 下痢になりやすい
- 風邪をよく引く
基本的に活力がなくグッタリしている方が多いです。ため息をつくのも特徴ですね。
気の不足とは?
漢方では身体を構成する物質は「気・血・水」の3つと考えます。
中でも「気」というのは我々の生命活動には欠かせないエネルギーのことで、絶えずカラダの中を循環しています。
「気?なんか怪しいなぁ〜」
このように思われる方も多いことでしょう。
ここに関してお伝えすると、
人間の身体は眠っていても内臓は動いていますし、血液も絶えず身体の中を循環していますよね。
これらを動かすには気(エネルギー)は必要不可欠であり、細胞分裂(新陳代謝)などにも気は使われています。
気が不足すると、
- 体温の維持ができない
- 汗のコントロールができない
- 代謝が落ちる
- 血液循環が悪くなる
- 免疫力の低下
などが起こり、気虚(エネルギー不足)という状態になります。
養生ポイント
ポイントは下記の4つ!
- 無理をしない
- 十分な睡眠をとる
- 胃腸に負担をかけない
- 適度な運動をする
働きすぎは気を消耗します。過労は避けよく寝るようにしてください。
そして、最も重要なのが胃腸です。気(エネルギー)は飲食物を消化吸収して作られるため、胃腸の状態はとても大切です。
冷たい飲み物・脂っこいもの・生物などはなるべく摂らないようにしましょう。
また、運動は気の巡りが良くなります。一駅歩いたり、朝散歩したりなど無理のないことから始めてみてください。
おすすめの食材は、お米、豆類、卵料理、肉類、きのこ類、芋類、えび、かぼちゃ、栗、ねぎ、くるみ、生姜、りんご、にんじん、ブロッコリー、とうもろこし、紅茶、ほうじ茶など。
香辛料などのスパイスは汗をかくことで気(エネルギー)が消耗することがあるので控えるようにしましょう。
またできるだけ冷たいものや生物は避け、加熱した温かいものを摂取してください。
②血虚(けっきょ)
血虚とは「血」が不足している状態を指します。
特徴は下記のとおり。
- 眠れない
- 顔色が悪い
- 物忘れを多くする
- 目が疲れやすい
- 爪が脆くなる
- 皮膚にツヤがない
- 足をよくつる
- 不安感が強い
- 髪が細く抜けやすい
- 乾燥しやすい
- 立ちくらみをする
カラダに栄養を運ぶ「血」が不足すると、上記の症状が起こります。
特にめまいや立ちくらみをする人は多く、深刻になると不眠や動悸などの症状が出ることもあります。
養生ポイント
ポイントは下記のとおり。
- 赤と黒の食べ物を摂る
- 目を酷使しすぎない
- 大量に汗をかきすぎない
- 足三里にお灸を据える
赤と黒の食べ物は「血を作る」食べ物です。
例えば、黒豆・黒ごま・トマト・にんじん、いちご、クコの実、ナツメ、ひじき、海苔、牡蠣、緑黄色野菜など。
時々「レバーはダメなんですか?」と聞かれますが、もちろんOKです。ただし、胃腸の調子が悪い時は上記の食材から摂っていきましょう!
また、目を酷使し過ぎると「血」を消耗するとも言われています。パソコンやスマホの使いすぎにはご注意ください。
足三里
◯取り方
膝(お皿)の下から指4本分下
足三里は胃腸の調子を整えるツボ。
血は食べ物を消化吸収して作られるので、胃腸の状態を良くすることは「血」を作ることにつながります。
1日3〜4壮のお灸を据えてみてください。
③気滞(きたい)
気滞とは「気」がうまく巡っていないこと。
特徴は下記のとおり。
- イライラする
- 情緒不安定
- 下痢や便秘を繰り返す
- ため息をつく
- ゲップがよく出る
- 頭痛がする
- 喉がつまる
- お腹や胸に張った痛みが出る
- おならが出やすい
特に精神的な症状(イライラ・憂鬱・不安)が出る方が多いです。
些細なことですぐイライラする方は気を巡らすことが大切。
養生ポイント
ポイントは下記のとおり。
- 苦味がある食材をとる。
- ストレス発散をする
- 趣味や好きなことに没頭する
苦味のある食材は「気を散らす」作用があります。
例えば、セロリ・三つ葉などの香味野菜、レモン・グレープフルーツ・オレンジなどの柑橘類、ミントやハーブ類など。
気滞タイプはとにかく気を巡らせることが重要です。
ストレスは気の巡りを悪くするので、なるべくストレスを減らす(発散する)ことを心がけてみてください。
また、適度な運動は気の巡りをよくすることにつながります。
④瘀血(おけつ)
瘀血は血の巡りが悪いこと。
特徴は下記のとおり。
- 肩こりがひどい
- 頭痛が頻繁に起こる
- 唇や顔の血色が悪い
- 手足が冷えやすい
- アザができやすい
- 月経異常がある
- 生理痛が重い
イメージとしては「血」がドロドロの状態。
特に女性に多いタイプですが、瘀血によって生理痛が重かったり、カラダに不調を抱える方は多いです。
養生ポイント
ポイントは下記のとおり。
- 血液サラサラ食材をとる
- 血行をよくする
- 三陰交にお灸を据える
血をサラサラにする食材は青魚が一般的ですね。
他にはネギ、らっきょう、にら、生姜、ニンニク、桃、黒糖などもおすすめ。
血行を良くするにはカラダを動かしたり、お風呂にしっかり浸かったり、冷たいものを摂らないこも大切です。
三陰交
内くるぶしから指4本分/骨の際
三陰交は婦人科疾患や血流改善に使う万能なツボ。
血流を良くするためにもお灸で温めるのがおすすめです。
⑤陰虚(いんきょ)
陰虚は潤いが不足している状態のこと。
特徴は下記のとおり。
- 口や喉が乾く
- コロコロ便 or 便秘
- のぼせやすい
- 微熱っぽい
- 頬が赤くなる
- 動悸
- 手足が熱い
- 痩せ型
- 空咳が出る
- 冷たい飲み物を欲する
- 肌が乾燥しやすい
とにかく喉が乾いて仕方がない方は陰虚の体質です。
カラダを潤す力が足りないので、「乾燥・微熱・寝汗」などの症状も出てきます。
養生ポイント
ポイントは下記のとおり。
- 水ではなく食材でカラダを潤す
- 辛いものは避ける
- 乾燥対策をする
基本的には水をゴクゴク飲むのでななく、食材で身体を潤すようにしてください。
なぜ水をゴクゴク飲んではいけないかと言うと、水を取りすぎると身体が重だるくなったり、関節炎などの原因になりうるからです。
詳しくは次の章で解説しますね。
乾燥対策かつ身体を潤す食材は、基本的には「白い食べ物」を摂ること。
例えば、白菜・白キクラゲ・豆腐・豚肉など。
米+梅干しなど「酸味+甘み」の組み合わせ、ぶどう、梨、みかん、レモンなどもおすすめです。
⑥痰湿(たんしつ)
痰湿はカラダに余分な水分が停滞している状態のこと。
特徴は下記のとおり。
- カラダが重だるい
- 肥満体質
- めまいや吐き気
- 痰がからむ
- 手足のむくみ
- 雨の日や気圧の変化で不調になる
- 舌のぼてっとしている or 歯型がつく
- 下痢や軟便が多い
- 食欲がない
- 甘いもの、脂っこいものが好き
- お酒をよく飲む
基本的にはポッチャリタイプの方が多いです。
常にカラダが重だるく、むくんでいる方は要注意。
養生ポイント
ポイントは下記のとおり。
- 食物繊維を摂る
- 甘いものやお酒は控える
- 汗を流す
食物繊維は海藻類や根菜類に多く含まれています。
例えば、わかめ・昆布・大根・こんにゃく・そば・イワシ・ごぼう・レタス・白菜・きのこ類・烏龍茶など。
甘いものやお酒の飲み過ぎは、カラダに余分な水分(湿)がたまるので控えめにしましょう。
あとは運動してしっかり汗を流すこと。汚い水を外に出すイメージですね。
無理ない程度に実践してみてください!
陰陵泉
◯取り方
内くるぶしから膝方面に上がっていき、膝下で指が止まる所
陰陵泉は水分代謝や身体の余分な物を排泄する役割があり、
- むくみ
- 身体が重い
- おしっこが出づらい
時に用います。
また、五臓の「肝と腎」を補うツボでもあり、女性の陰部痛や痒み、月経痛などにも用いることがあります。
お灸を据えるのがおすすめ。
1日2壮お灸を据えてみてください。
⑦陽盛(ようせい)
身体の熱が過剰な状態を指します。
特徴は下記のとおり。
- 暑がり
- 口臭・体臭がきつい
- 口がよく乾く
- 汗をかきやすい
- 赤ニキビが出きやすい
- 顔に熱がこもる
- 尿の色が黄色い
- 暴飲暴食をする
- 便やおならが臭い
先ほどの陰虚と似ている症状があるのですが、陽盛は熱が過剰で潤いはある状態を言います。
養生ポイント
ポイントは下記のとおり。
- 頑張りすぎない
- あっさりした料理をとる
- 足湯に浸かる
基本的には頑張り屋さんに多い体質です。
無理をしすぎず、たまにはブレーキをかけるように心がけましょう!
おすすめの食材は「清熱作用」のあるもの。
例えば、セロリ、トマト、きゅうり、バナナ、すいか、こんにゃく、りんご、ココナッツ、豆腐、栗、柿、白菜、しじみなど
また上に熱が上りやすい体質なので、足湯で下に熱を降ろすこともおすすめです。
⑧陽虚(ようきょ)
身体を温める力が弱い方になります。
特徴は下記のとおり。
- 寒がり
- クーラーに弱い
- 足腰が冷えている
- 尿の回数が多い
- 夏でも温かいものを欲する
- 顔面蒼白
- 下痢をしやすい
- 動悸や息切れをしやすい
カイロをしたり、温かい格好をしても身体が温まらない方は陽虚体質。
五臓六腑(内臓)や気血水の機能低下が考えられます。
養生ポイント
ポイントは下記のとおり。
- 筋トレや運動で熱を産生する
- 冷たいもの・生物は避ける
- お風呂にゆっくり浸かる
- 服装は露出をしない
まずは熱を産生するために運動を習慣にしましょう!
おすすめの食材は身体を温める(温性)の食材。
例えば、鮭・ニンニク・生姜・ネギ・シナモン・にら・スパイス・紅茶・えび・ラム肉・牛肉など。
コツコツやれば体質は変わります。できることから実行してみてください!
以上、ここまで8つの体質を順番にお伝えしてきました。
最後まで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
簡単にまとめをして終わりますね。
本日のまとめ
今回お伝えした体質は下記のとおり。
- 気虚:エネルギー切れ
- 血虚:血の不足
- 気滞:気の滞り
- 瘀血:血の巡りが悪い
- 陰虚:水の不足
- 痰湿:水が停滞
- 陽盛:熱が過剰
- 陽虚:温める力がない
ご自身の体質は見つかりましたか?
冒頭でもお伝えしたように、ご自身の体質を知ることで日々の生活で気をつけるポイントがわかります。
ただし、気をつけなくてはいけないことは「人間のカラダは常に変化する」ということ。
例えば飲み会が続けば「痰湿」になるし、生理前後は「血虚」になりやすかったりします。
大切なのは、その時々の状態に応じて適切な対策をとっていくこと。
当院では患者様の状態に合わせた「体質別養生集」を随時プレンゼントしております。
今後、カラダに不調を感じた時は「今の自分は何タイプだ?」と疑問に思っていただき、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。
何かわからないことや疑問に思うことがあれば、お気軽にご相談ください。
参考文献
「食べる漢方」著者:櫻井大典
「おうち養生」著者:田中友也
「臨床中医臓腑学」著者:王財源
「まんが経穴入門」著者:土屋憲明