中医学Zoomで講話をしました!
こんにちは、院長の久保和也です。
先日、7月26日(月)20:00〜中医学Zoomに参加させていただきました。
テーマは「そうだ 鍼灸、行こう。」
中医学Zoomは「日本の家庭に中医学を!」ということをモットーに、完全無料で学べるZoomセミナーです。
当日は250名を超える方々に参加していただき、鍼灸の魅力を伝えられる会となりました。
▼講話前、講師陣でパシャリ📸
僕はトップバッターで「東洋と西洋の鍼灸治療の違い」というパートを担当させていただき、鍼灸の歴史や鍼灸業界の現状をお話させていただきました。
今回は当日の内容を少しだけお話しできればと思います。
皆さんは鍼灸と聞くと、どんな症状に効果があると思いますか?
おそらくほとんどの方が「腰痛、肩こり、美容鍼による顔のリフトアップ」などを想像されるんじゃないかなと思います。
しかし本来の鍼灸治療というのは、(下記のスライドにあるように)様々な疾患に対して治療することができます。
ここに書いてあるのは、1979年にWHO(世界保健機構)が公表した鍼灸の適応疾患43疾患となります。
当時は43疾患として発表されたらしいですが、それから中国や日本の臨床経験をもとに適応疾患の数も増えていったと言われています。
とはいえ、このスライドを見たときに「本当に鍼灸でこんなに多くの疾患が治療できるの?」と疑問に思う方も多いと思います。
ここに関してお伝えすると、ここに載っている適応疾患の中で西洋医学的な鍼灸治療で対応できるのは①神経系疾患(腰痛、坐骨神経痛、肩こり、腕神経痛)と③運動器疾患くらいになります。
残りのほとんどの疾患は東洋医学的な鍼灸治療でないと対応できない、もしくはそもそも治療することが難しい疾患となります。
ではなぜ、西洋と東洋の鍼灸治療で対応できる疾患が違うかと言いますと、その答えは治療をしている箇所、体の見方が違うからなんです。
2つの医学を比較していくと、
西洋医学の鍼灸治療はどういうものかというと、「局所をみる治療」なんですよね。
例えば、肩こりがひどかったら、肩の筋肉を緩めるために肩に鍼をさす、腰が痛ければ腰、もしくは腰と関連性のある臀部に鍼を刺すといったような痛みのある部位、症状が出ている箇所に直接的な治療をするのが西洋医学的な鍼灸治療となります。
一方、東洋医学の鍼灸治療とはどういものかというと、「五臓六腑を見る治療」となります。
この五臓六腑が正常に働いている方は、体を構成する気血水も問題なく体内を循環することができ、痛みや病気を引き起こさない体となります。
例えば、先程の肩こり1つとっても、体に余分な水分がたまって肩が重だるくなる、風邪の初期で外から悪いもの(ウイルスや細菌に侵入されて)肩こりになる、五臓六腑の「肝」という機能が弱まって肩こりになるといった複数の原因が存在します。
これは何も東洋医学だけに限ったことではなくて、例えば、西洋医学的にも胆石で右肩が痛くなる、胃に問題があって背中がはるとか、「内臓関連痛」というものがあります。
この例はちょっと極端ですが、、何がお伝えしたいかというと、内臓の弱りや機能の低下によって症状は出るということなんですね。
なので、東洋医学的な鍼灸治療は肩こりにだけにとどまらず、五臓六腑(症状のでている原因)を治療することによって、数多くの疾患に対応できる治療法となります。
ここまで西洋と東洋の鍼灸治療の違いをお話してきましたけど、
実は現在、日本の鍼灸業界というのは、東洋医学的な治療ができる、もしくはしている鍼灸院は、全体の約2%しかないと言われています。
それ以外の98%の治療院は西洋医学的、もしくは西洋医学よりの治療をしている鍼灸院となります。
これだけを聞くと、「なんで、ほとんどが西洋医学になってしまってるの?」「もっと東洋医学的な鍼灸院もあっていいと思うけど?」と疑問に思う方も多いと思います。
その理由というのは「日本の医療の歴史」に深く関係しています。
我々が住んでいるこの日本というのは元々は東洋医学が主流の国だったんですよね。
歴史を遡っていくと、今から約1500年前(飛鳥時代)に遣唐使や遣隋使によって、鍼灸や漢方薬は日本に伝えられたと言われています。
それから奈良、平安、鎌倉時代は灸治療が盛んだったと言われていて、明治初期まで鍼灸師は「鍼医者」「鍼医」と言われていたそうです。
鍼灸が紹介されている代表作では鎌倉時代に吉田兼好が書かれた「徒然草」、江戸時代の松尾芭蕉の「奥の細道」があります。
特に江戸時代は鍼灸治療は盛んだったんですよね。
つまり、約1300年ぐらいは東洋医学が主流だった時代ということです。
しかし、幕末~1828年の明治維新以降、蘭方(西洋医学)の伝来によって、医学や文化も西洋化されていき、鍼灸や漢方薬は「非正統医学」とされてしまいました。
なぜ、このような「非正統医学」と言われるまでになったかというと、鍼灸や漢方薬というのは内科的な疾患に対しては治療効果なども認められていたのですが、外傷と言われる(ケガ)などに関しては、不得意な部分があったんですよね。
西洋医学というのは元々は「戦争医学」と言われていて、戦争で怪我をした方の外科的な処置とか、緊急を要する疾患に対しては西洋医学でしか対処ができなかった歴史があります。
なので、戦争が多かった明治以降というのは、西洋医学が主流となってしまったということ。
そいて戦後、再びGHQによる「鍼灸禁止要望」によって、科学的根拠がない・鍼や灸は野蛮な行為として言われてしまい、さらに厳しい状態となってしまいました。
この2つの大事件は鍼灸業界にとっては絶体絶命のピンチだったのですが、鍼灸や漢方薬を存続しようと動いてくれた先生方がいたんですよね。
色んな先生方が政府に認めてもらえるように科学的に説明できる「鍼灸」の研究や論文を発表してくださったおかげで、鍼灸はなくなることがなく今の時代まで引き継がれているといった流れになります。
そして、最近では2018年に鍼灸や漢方薬は伝統医学としてWHOに正式に「医学」として認定されたり、NHKでも東洋医学を見直す番組というのが放送されるようになってきました。
長くなりましたが、今回の話をまとめると上記のスライドのようになります。
僕自身、今は東洋医学専門な鍼灸治療をさせていただいてますけど、今鍼灸治療ができているのは過去に西洋医学的(科学的)に説明ができるようにして、鍼灸を存続してくだっさた先生方のおかげだと思っています。
なので、どちらの医学が優れているとか、東洋の鍼灸治療の方がいいとか、そういったことは一切思っておりません。
しかし、あまりにもここ日本というのは医学が偏りすぎていて、もう少し東洋医学が見直されてもいいと思っていますし、僕自身は東洋医学が広まることで救える患者さんも多いと思っていますし、薬漬けになっている方々を開放して日本の医療費も削減できると思っています。
なので今後は、このようなZoomセミナーを通して鍼灸や薬膳、東洋医学(中医学)の魅力を伝えていけたらと思っております。
長くなりましたが、今回の話は以上です。
ありがとうございましたm(_ _)m
※過去に放送された中医学Zoomのアーカイブも見れますので、ご興味のある方は下記のリンクからどうぞ!