立ち上がると「めまい」がする原因と対策|脳の血流を促すツボと自律神経を整える習慣

  • 椅子から立ち上がった瞬間、目の前がスーッと暗くなる
  • 朝、起き上がろうとするとクラッとして、しばらく動けない
  • 病院で検査しても『異常なし』。でも、このフラつきが不安で仕方ない…

立ち上がるたびに起こるめまいや立ちくらみ。これは、重力によって下半身に下がった血液を、脳まで押し戻す力が弱まっているサインです。

東洋医学では、この「血液を持ち上げる力」を「昇提(しょうてい)」と呼びます。この力が不足すると、脳が一時的に酸素不足になり、シャットダウンするようにめまいが起こるのです。

本記事では、鍼灸師が臨床で用いる「脳の血流を整えるツボ」と、立ちくらみを防ぐための「朝の習慣」を分かりやすく解説します。

今日から実践して、フラつきのない安心した毎日を取り戻しましょう。

なぜ立ち上がると「めまい」がするのか?東洋医学の視点

立ち上がる瞬間のめまいは、自律神経のスイッチミスと、エネルギーを上に運ぶ「脾胃(ひい)」の力の不足が重なって起こります。

1. 自律神経の「締め」が間に合わない

本来、人が立ち上がる時は、自律神経(交感神経)が瞬時に血管をギュッと締め、重力に負けないよう血圧を維持します。

しかし、疲労やストレス、更年期などで自律神経が乱れていると、このスイッチが遅れてしまうわけです。

その結果、血液が下半身に溜まり、脳が一時的に「空焚き」のような状態になってしまいます。

2. 「脾胃」の元気がなく、気が持ち上がらない

東洋医学では、胃腸のことを「脾胃」と呼び、エネルギー(気)を作る源と考えます。

自律神経をスムーズに働かせるための「燃料」を作るのもこの脾胃です。

  • 昇清(しょうせい)作用の低下:脾胃で作られたきれいなエネルギーを脳まで吸い上げる働きです。この力が弱まると脳がガス欠を起こし、ふわふわしためまいを招きます。

  • 昇提(しょうてい)作用の低下:重力に逆らって血液をグッと上に保持するパワーです。この力が不足した状態を「中気下陥(ちゅうきかかん)」と呼び、立ち上がった瞬間に血流がガクンと下がる原因になります。

この「持ち上げる力」の低下は、立ちくらみだけでなく、まぶたが下がる(眼瞼下垂)や胃下垂、子宮下垂などの「内臓下垂」を引き起こす根本原因にも繋がっています。

3. 「湿(しつ)」の発生

脾胃の働きが悪いと、体内に余分な水分(湿)が溜まります。

これが頭に「重だるい重し」のようにのしかかり、フラつきをさらに悪化させてしまいます。

鍼灸師の視点

つまり、立ちくらみを根本から治すには、自律神経を整えるだけでなく、その土台となる「脾胃」を元気にして「昇提・昇清」の力を取り戻すことが不可欠なのです。

脳の血流をサポートする「救世主」のツボ4選

立ちくらみが起きた時、あるいは起きる前に刺激してほしいツボです。

① 【脳の気を引き上げる】『百会(ひゃくえ)』

場所:頭の真てっぺん。左右の耳の最高部を結んだ線と、鼻からの正中線が交わる場所。

こんな時に:立ち上がると目の前が暗くなる、頭が重だるい、やる気が出ない時。

百会は「百の気が会う」場所。重力に負けて下へと下がってしまったエネルギーを、磁石のようにグッと頭頂部へ引き上げてくれる「昇提(しょうてい)」の要です。

プロが教えるセルフケアのコツ

もちろん指で押しても良いですが、より効果的に「昇提」を助けるなら、ネットショップなどで手に入る「ローラー鍼」や「集毛鍼(刺さないスプリング式の針)」がおすすめです。

  • ローラー鍼:頭頂部を前後にコロコロと優しく転がしてください。広範囲を刺激できるため、ツボを正確に探すのが苦手な方でも失敗がありません。
  • 集毛鍼:10本ほどの針が束になったような道具で、百会の周りを「トントントン」とリズム良く叩きます(爪楊枝を束ねたもので代用も可)。

この「心地よい刺激」が皮膚のセンサーを介して脳に伝わり、沈んでいた気をスッと持ち上げ、視界をパッと明るくしてくれます。

指で押すのが疲れるという方は、ぜひ枕元に一つ置いておいてください。

② 【脾胃を整え、上へ運ぶ力を生む】『足三里(あしさんり)』

場所:膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみから指幅4本分下がったところ。すねの骨の外側。

こんな時に:胃腸が弱く、めまいと一緒に吐き気や食欲不振がある、疲れやすい時。

脳へ送る栄養(気血)を作る「工場」を動かすツボです。ここを刺激することで、エネルギーを脳まで吸い上げる「昇清(しょうせい)」のパワーを復活させます。

毎日お灸を据えることで、立ちくらみが起きにくいタフな胃腸と体を作れます。

③ 【自律神経と胃腸を同時に整える】『内関(ないかん)』×『公孫(こうそん)』

  1. 内関:手首のしわから肘に向かって指幅3本分。腕の中央にある2本の筋の間。
  2. 公孫:足の土踏まずのアーチの中央付近。足の親指の付け根の大きな骨を越えた先のくぼみ。

こんな時に:突発的なめまい、フラつきに伴う動悸や不安感、胃のむかつきがある時。

この2つのツボをセットで使うのは、鍼灸の伝統的な手法です。

「内関」が自律神経(交感神経の暴走)を鎮め、「公孫」が脾胃(昇提・昇清の力)を強力にバックアップします。

やり方:右の内関を親指で押しながら、左の公孫をお灸(またはその逆)というように、手と足をセットで刺激すると、体の中を通るエネルギーの通り道が整い、スッと意識がはっきりしてきます。

自律神経を瞬時に調整する「井穴(せいけつ)」と爪もみ

臨床の現場で、自律神経のバランスが乱れている方に必ずお伝えしているのが、手足の指先にある「井穴(せいけつ)」というツボです。

「井戸から水が湧き出る場所」という名の通り、ここは経絡(エネルギーの通り道)の出発点。

指先という脳から離れた末端を刺激することで、昂った神経を鎮め、全身の血流を劇的に改善するスイッチになります。

この井穴を日常で手軽に刺激する方法が、「爪もみ」です。

立ちくらみを防ぐ!「動作」と「習慣」の工夫

ツボと合わせて、以下の習慣を取り入れると、脳の血流がさらに安定し、立ち上がった時の「クラッ」を最小限に抑えることができます。

1. 脳に酸素を届ける「深呼吸パタパタ」

起き上がる直前、座った状態(または寝たまま)で以下のセットを行ってください。

  1. 足首パタパタ:足首を上下に10回、大きくパタパタと動かします。「第二の心臓」であるふくらはぎのポンプを先に動かすことで、足に溜まった血液を強制的に脳へと押し戻します。
  2. ゆったり深呼吸:足を動かしながら、鼻から吸って口から細く長く吐く深呼吸を3回行います。深い呼吸は自律神経を整え、脳へ十分な酸素を送り届ける手助けになります。

2. 「30秒の儀式」でゆっくり起き上がる

急激な姿勢の変化は、自律神経のスイッチが追いつきません。

座って15秒:まずは座った姿勢で「足首パタパタ」をしながら、体が慣れるのを待ちます。

立ち上がって15秒:ゆっくり立ち上がったら、すぐに歩き出さず、その場で15秒ほど静止します。この「刻み」を入れるだけで、脳の血流不足を防げます。

3. 「カロリー不足」の恐怖!脳を動かす燃料を摂る

立ちくらみが治らない原因の多くは、実は圧倒的なエネルギー(カロリー)不足にあります。

「朝は食欲がないから…」と、コーヒーやスムージーだけで済ませていませんか?

東洋医学では、食べたものからエネルギー(気)が作られます。燃料が空っぽの状態では、どれだけツボを押しても「血を持ち上げる力(昇提・昇清)」は発揮されません。

注意すべき「隠れ栄養失調」:特にお菓子だけで済ませたり、極端な糖質制限をしている人は要注意。脳の唯一の栄養源である糖質が足りないと、自律神経はパニックを起こします。

セルフ灸のやり方(立ちくらみ・めまい)

①用意するもの

市販のお灸(台座灸・せんねん灸など初心者向けがおすすめ)
ライター or チャッカマン
灰皿または耐熱皿
タオル、水(熱を感じすぎた時のため)、保冷剤でもOK

②お灸をする前のポイント

施術前に 軽く膝周りをさする(血流が上がり、熱が通りやすくなる)

食後30分は避ける

できれば 毎日同じ時間帯 に行うと効果が出やすい
同じツボに1壮/日までが基本

③お灸の手順

手順①:ツボを軽く押して確認
「ズーン」と響くポイントが適切。

手順②:お灸をセット
→台座灸の底部シールを剥がし、ツボに貼る。

手順③:火をつける
→先端に火をつけ、煙が安定したら深呼吸。

手順④:温かさがじんわり広がるのを感じる
熱すぎたらやめてOK。無理はしない。

手順⑤:燃え尽きたら外し、軽く押さえる
→手のひらで3秒ほど温めて蓋をするイメージ。

※1分でわかるセルフ灸のやり方(手順)を参考に

最後に:その「めまい」は頑張りすぎのサインです

立ち上がった瞬間に襲ってくるめまいは、体があなたに送っている「エネルギーが底をつきそうだよ」「少しペースを落として」という切実なサインです。

今回ご紹介したツボや生活習慣、そして「しっかり食べる」という当たり前のようで大切なケアを、ぜひ今日から一つずつ取り入れてみてください。

もし、ご自身や大切なお子さんの不調が長引き、「どこに相談していいかわからない」と不安を感じているなら、一人で抱え込まないでください。

東洋医学の鍼灸は、乱れた自律神経を整え、体の中から「上へ持ち上げる力」を呼び覚ますプロフェッショナルです。

ふとした瞬間の怖さをなくし、安心して一歩を踏み出せる毎日へ。あなたの体が本来持っている「元気になる力」を、一緒に取り戻していきましょう。

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