50代前半・男性|食生活の見直しをきっかけに症状が安定に向かった潰瘍性大腸炎の症例

初診時の状況

潰瘍性大腸炎発症から約2年
通院のみで点滴・薬処方(ステロイド使用)
腸症状:排便回数1日15回前後(ほぼ血便)
朝方の腹部痛で起床、排便後もスッキリせず
工場勤務(シフト制)、ストレスあり

東洋医学的な見立て

脈:浮やや数
腹:右下腹部、胃の辺りに圧痛

体質・背景

長年の脾胃虚弱(本人の自覚あり)
工場勤務・シフト制 → 睡眠リズム乱れ
気を使う人(喋り方、声の震えなどから自律神経緊張・気の消耗)
ストレス背景が強く、肝の疏泄失調(循環力低下)が基本にある

主な病理

① 肝脾不和(肝→脾胃を攻撃)

  • ストレス + 食生活(小麦・甘いもの・酒)
  • 胃もたれ・朝の悪化
    → 肝の疏泄失調が腸に影響

② 肺の粛降作用の低下

  • 排便時の「上がってくる感じ」
    →肺の粛降作用低下により、気の逆上(気逆)が認められる
  • 朝4時に痛みで起きる
    →子午流注による肺・大腸の時間

③ 上熱下寒

  • 顔色はよく赤みや熱感の描写あり
  • 下半身(大腸)に冷え
  • ラーメン・菓子パン・酒 → 熱を助長
  • 背中の毛が濃い→体表の余熱のサイン

治療内容と使用経穴例

脾胃を立て直すと同時に、循環力の改善を目指した。

  • 肺の粛降作用回復による気の流れの調整
  • 肝の疏泄作用促進による熱の循環改善
  • 脾胃を補い気血生成と消化吸収力を高める。
  • 下半身および裏内庭の使用により頭寒足熱の状態へ誘導

使用経穴:太衝、孔最、裏内庭、太淵、太白、通里、飛揚、風池、百会など

施術目標

旅行先で趣味のロードバイクを楽しめる体力と腸の安定

回数ごとの経過

■1〜4回目
・腸症状ほぼ変化なし
・1日の便回数15回、ほぼ血便
・胃もたれが毎食起きる

まだ腸に炎症が強く残り、体内の熱が引かず、変化が出にくい時期。

■5回目(ターニングポイント)

・本人と一緒に食生活を振り返る
・菓子パン・ラーメン・アルコールなど、腸に負担の大きい食品を日常的に摂取していたことに気づく
・「治療を受けるだけでなく、自分でも変えられる部分」を本人が認識

食の見直しが鍼灸治療の効果を最大限引き出す転機に

■6〜8回目
 
・5回目の治療3日後、初めて「調子がよい」と実感した日があった
・顔色が明るく、身体の熱っぽさもなく、脈も落ち着いてくる
・トイレ回数はやや減少傾向
・本人主体で食生活を調整
・鍼灸に加えてセルフお灸を取り入れ始める
ロードバイクの通勤で体が温まると腹部がスッキリする感覚がある
 
■9回目
 
・夜を軽食にした翌日、調子が良いことに気づく
ご自身で何をしたら体調に良い影響が出るか細かく観察できるようになってくる
※ただしこの時点での体調点数:10点中3点と回答
 
■10〜13回目
 
・トイレ回数は徐々に減少、血便も減少傾向
・朝方の腹部不快感はいまだにあるが、日中は調子良いことが増える
・変わらず食生活を気をつけていること、鍼灸・セルフ灸の併用により、本人主体で調子を整えられる感覚
 
■14回目
 
・トイレ後のスッキリ感が増えたとご報告いただく
・体調点数:10点中5点に上昇
・朝の症状は今だに出るが、それ以外は概ね良好
・旅行先でロードバイクを楽しむ目標に向け、腸と体調の安定を続けていく

まとめ

担当鍼灸師:若菜烈

本症例は、食生活の改善 × 鍼灸治療 × セルフ灸の三本柱が揃ったことで、症状の改善が加速したケースです。

  • 排便回数の減少
  • 血便の改善
  • 体調点数の上昇
  • 自分の体調を自分で整える感覚が育ったこと

特に、本人自身が食生活の重要性に気づき、主体的に取り組んだことが大きな転機となりました。

鍼灸治療は身体の自然治癒力を高めますが、生活習慣と組み合わせることで効果は何倍にも広がっていきます。

※施術効果には個人差があります。
 

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