不眠症とアトピー性皮膚炎が同時に改善した症例(30代・男性)

今回は、不眠症(中途覚醒・昼間の眠気)とアトピー性皮膚炎(痒み・肌荒れ)を同時に抱える30代後半男性の改善経過をご紹介します。

不眠とアトピーは一見まったく別の症状のようですが、東洋医学では「体の熱」や「巡りの乱れ」が共通の原因になっているケースもあります。

この症例はまさにその典型で、体全体のバランスを整えることで複数の症状が同時に改善していきました。

初回来院時の状態

アトピー性皮膚炎

顔や首を中心に全身的な痒み
見た目の赤みや乾燥も気になり、仕事に集中しづらい日も
ステロイド外用薬は毎日使用
特にお風呂上がりの痒みが強い

不眠症

今年1月頃から発症
2時間ごとに目が覚める中途覚醒
眠れてもスッキリ感がない、昼間の強い眠気
稀に5時間眠れる日もある
寝つきは問題なし
気力・体力の低下が顕著
病院の薬もあまり効かず中止

その他の所見

のぼせやすく、熱が上半身にこもりやすい体質
体全体の巡りの悪さもみられる

東洋医学的な見立て

この方の症状の根底には、「熱が上にこもり、下に降りにくい(=のぼせ)」という体質がありました。

  • 熱が上に昇る → 顔・首の痒みが強くなる
  • 熱がこもる → 頭が興奮し、睡眠が浅くなる
  • 熱を動かせない → 巡りが悪くなり、回復力が低下する

そのため施術では、

・熱を下げて上半身の負担を減らす

・全身の巡りを整え、熱がこもらない体質づくり

を中心に行いました。

治療ペース

基本:週1回
調子が整ってから:2週に1回
最終的には:月1回のメンテナンスで安定

改善の経過

 1〜2回目

治療を受けた日は眠れるが持続しない
7時間眠れた日が1回出る
皮膚の変化はまだ少ない
血流が良くなった影響か、一時的に痒みが強く感じる日も

3回目

上半身の痒みが軽減
のぼせも少し改善
下半身の痒みはまだ残る
睡眠は「治療後のみ安定」の段階

4回目

肌のバリアが少しずつ回復
痒みも軽減傾向
2〜3日眠れる日が続くようになる
気力も回復し、食事改善をスタート

5〜7回目(大きな転換点)

肌の状態がぐっと改善
首から下は薬なしで過ごせる日も
のぼせ時に顔・首の痒みが出る程度
睡眠は週4〜5日ぐっすり
※ここで治療間隔を「週1→2週に1回」へ

8回目

風邪を引くが、アトピーと不眠は悪化せず
免疫の土台が整ってきた証拠

9〜10回目

不調ほぼ消失
気力体力が戻り、外出が増える
「とても調子がいい」と実感が強まる

11回目

季節の変わり目で軽く悪化
肌の乾燥が少し出る
睡眠も一日だけ寝つきが悪い日があった

12回目(現在)

不調はほぼ消失
海外旅行できるほど体力・気力が回復
月1回メンテナンスで安定

症例まとめ

この症例では、「のぼせ(熱が上にこもる)」という体のアンバランスが、不眠症とアトピー性皮膚炎の両方を悪化させていたと考えられます。

治療を重ねることで、

  • 熱が適切に下へ降りる
  • 全身の巡りが整う
  • 睡眠の質が改善
  • 肌の痒み・赤みが軽減
  • 気力・体力が回復

と、複数の症状が同時に良い方向へ向かいました。

また、改善が進むにつれ、「食事を見直したい」「外出したい」と、ご本人のQOLが自然と上向き、生活の変化も治療効果を後押ししたと考えます。

風邪や季節の変わり目での体調の波はありましたが、大きく崩れることなく、自力で回復できる身体に。

東洋医学的アプローチの強み

不眠症とアトピー。一見まったく関係がないように見えても、体の熱・巡り・バランスの乱れが共通していることは少なくありません。

東洋医学は症状を個別に見るのではなく、「身体全体の流れ」を整えていく治療法 です。

その結果、今回のように複数の慢性症状が同時に改善していくケースは珍しくありません

おわりに

アトピー性皮膚炎や不眠症では、ステロイド外用薬や睡眠薬など 西洋医学的な治療が大きな助けになる場面は多くあります。

一方で、薬だけでは改善が進みにくいケースや、再発をくり返してしまうケースも少なくありません。

今回の症例のように、「体の熱の偏り」や「巡りの滞り」など、体質そのものに原因があるタイプ では、鍼灸や食事・生活習慣の見直しといった 体質改善のアプローチが大きな力を発揮します。

薬か鍼灸かのどちらかではなく、薬で症状を抑えつつ、鍼灸で体質を整えるという“選択肢の幅”があることを知っていただくことが何より大切だと思います。

アトピーや不眠で悩んでいる方にとって、「自分の体は変われるかもしれない」そんな希望の一歩になれば幸いです。