「また怖くなってる」と気づくだけでいい。不安がなくならない理由を「脳科学」から考える

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こんにちは、クボ鍼灸院 代表の久保和也です。

患者さんを診ていてよく感じることがあります。「なんとかしなきゃ」「失敗したらどうしよう」と頭ではわかっていても、体が緊張してしまう方がとても多いということです。

仕事中にビクビクしてしまう。まだ何も起きていないのに怖い。怒られる前から体が固まる。そういった悩みを持つ方が、臨床の現場では本当にたくさんいらっしゃいます。

そしてそういう方の多くが、「自分が弱いから」「気にしすぎだから」と、自分を責めてしまっています。

でも、それは違います。

体がそう反応するのには、ちゃんと理由があるんです。今日は脳科学の観点から、その「理由」を少しだけ解き明かしてみたいと思います。

体の反応は「意志」ではコントロールできない

上司が近くに来るだけで体が固まる。メールの返信が遅いだけで「怒ってるのかも」と不安になる。こういったことは、本人が「怖がろう」と思っているわけではありませんよね。

実はこれ、脳の中の「扁桃体(へんとうたい)」という部分が関係しています。

扁桃体は感情の警報装置のようなもので、過去の怖い体験を「パターン」として記憶しています。

そして似た状況が来ると、0.1秒以内に体を緊急モードにしてしまう。心拍数が上がる、筋肉が固まる、呼吸が浅くなる。これはいわゆる「闘争・逃走反応」と呼ばれるもので、脳が「危険だ」と判断した時に自動で起こる反応です。

重要なのは、この一連の反応が、意識より先に起きているということです。「怖い」という感情が後からついてくるくらい、体の反応のほうが速い。

だから「気にしないようにしよう」と思っても、なかなか変えられないんです。

【脳科学のポイント】

扁桃体は「今この瞬間が本当に危険かどうか」を確認しません。
似たパターンを検知したら、問答無用で警報を鳴らします。
これは意志の弱さではなく、脳の自動反応です。

「まだ起きてないのに怖い」のはなぜか

臨床でよく聞くのが、「怒られてもいないのに怖い」「何もしてないのにずっと不安」という声です。

これはどうして起きるのでしょうか。

脳には「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる仕組みがあります。難しく聞こえますが、要は「ぼーっとしていても脳が勝手に動き続けている状態」のことです。過去を振り返ったり、まだ来ていない未来を心配したりするのが、このDMNの働きです。

不安が強い方ほど、このDMNが過剰に活動しているといわれています。

人間は今この瞬間にしか存在できないのに、脳はずっと過去と未来を行き来している。
これがエネルギーを消耗させ、体も心も疲れさせていきます。

私がよく患者さんに伝えることですが、過去も未来も、物質として「今ここ」には存在していません。あるのは今だけです。

それなのに、脳の中だけで不安を作り出してしまっているのです。

変えようとするより、まず「気づく」

では、どうすればいいのか。

よくある間違いが、「行動を変えよう」「ポジティブに考えよう」とすること。

これ、順番が逆なんです。

脳の回路をそのままにして行動だけ変えようとしても、なかなか続きません。

まず必要なのは、「気づき」です。脳科学の言葉で言えば「メタ認知」
自分の思考を外から観察する力のことです。

具体的にはとてもシンプルで、「あ、また怖くなってる」と気づくだけでいいんです。

🔄 たった一言の違い
❌「また怒られるかも……どうしよう、やばい、やばい」
⭕「あ、私また怖くなってるな。そういう癖があるんだな」

前者は不安の渦の中に入り込んでいる状態。
後者は、少し離れたところから自分を見ている状態です。
この「観察」の瞬間に、脳は少し落ち着きはじめます。

「それだけで変わるの?」と思うかもしれません。でも、これが本当に大事な第一歩なんです。

脳は気づかない限り、同じ回路を自動で走り続けます。気づいた瞬間、初めてブレーキがかかりはじめます。

自分を責めなくていい

ここまで読んでくださった方の中には、「これ、自分のことだ」と感じた方もいるかもしれません。

ビクビクしてしまうのも、不安が消えないのも、意志が弱いわけでも、性格の問題でもありません。脳がそう動くように「設定されてしまっている」だけです。

そしてその設定のほとんどは、幼い頃の体験や長年の積み重ねから来ています。

臨床で感じるのは、こういった不安を抱えている方の多くが、とても真面目で、責任感が強い方だということです。だからこそ、自分を責めてしまいやすい。

でも、まずは「そうか、私はこういう癖があるんだな」と、ただ知るだけでいいんです。責めなくていい。変えようとしなくていい。気づくだけで、脳は少しずつ変わっていきます。

脳には「神経可塑性(しんけいかそせい)」という性質があって、使い続けることで回路が変わっていきます。何度も「気づいて、受け入れる」を繰り返すことで、脳のデフォルトの反応そのものが、少しずつ穏やかになっていくんです。

最後に

不安を「なくそう」としなくていいです。

「また不安になってる」と気づいて、「しょうがないよ」と受け入れる。

その繰り返しが、本当にゆっくりと、現実を変えていきます。

自分の脳の癖を知ることは、自分を責めることじゃなくて、自分を理解すること。それが、変化の入口だと私は思っています。

もし「なかなか不安が消えない」「体の緊張がとれない」という方がいらっしゃれば、ぜひ一度ご相談ください。体の内側から、一緒に整えていきましょう。